人形師に訊く~頭師・大豆生田 博(おおまみうだ ひろし)さん~

この記事では、人形師の大豆生田 博(おおまみうだひろし)さんの「人形作りにかける思い」を紹介しています。
大豆生田さんはお雛様のお顔の部分の製作をされる頭師(かしらし)と呼ばれる職人さんで「ひな人形大ご奉仕会2020」でご用意するお人形の製作にも携わっていらっしゃいます。


岩槻は職人の町、たくさんの先輩に教わりました

大豆生田さんが頭師としてお雛様の製作に従事されるようになったきっかけを教えてください。

うちの父親が頭師として仕事をしていましたので、自然な流れで後を継ぐような形で始めました。早いもので頭師になって30年を越えました。

 

技術的に師匠と呼べる職人さん、尊敬できる職人さんはいらっしゃいますか?

岩槻は職人の街でたくさんの先輩がいらっしゃいます。うちの先代ももちろんおりますが、早くに亡くなったので仕事を教えてもらうことができず、岩槻の先輩職人さん、鈴木賢一先生はじめ、多くの先輩方にいろいろなことを教えていただいて覚えてきました。その他、頭作りにも活かせるかなということで、東京の人形作家の芹川英子さんについて創作人形の勉強をしました。

 

お雛様のお顔を作る上で、どのような製作工程がありますか?また特に気を遣う部分はどこでしょうか?

現在、雛人形の多くは石こうという素材でできているんです。石こうでお顔を製作する場合は、①型に入れて生地抜きの作業②お化粧の作業③結髪(けっぱつ)という、大きく分けて3つの製作工程に分けられます。もちろんその中には、筆仕事で細かいまつ毛を描いたり、口紅をしたり、さまざまな作業があります。

中でも目のまわりの筆仕事は職人としての腕の見せどころです。特に眉毛は重要で、少しハの字になれば間抜けな顔になるし、少し吊り上がればきつくなるし、ちょっとした高さの違いでも表情が変わってきます。そのため、製作工程の中でも特に眉毛、目には気を遣いますね。

お雛様のお顔を描くときは、もちろん全て手作業です。実際並べてみてなるべく同じ顔になるようにしています。現在は石こう作っていますので、昔ながらの桐塑(とうそ)に比べると均一な仕事ができるようになってきていると思います。

人形製作をする大豆生田博さん

かわいい中にも気品を 時代の変化に合わせて増える雛人形

お雛様のお顔の種類、原形の数にはどれくらいの種類がありますか?

たくさんあるので数で答えることはできませんが結構あります。それこそ、衣装に比べるとお顔の変化は少ないかと思いますが、昔ながらの「しもぶくれの高貴なお顔」というより、最近は目がぱっちりしたかわいらしいお顔が人気だったりと、時代に合わせてお顔の種類も増えてきています。昔ながらのお顔・今風のお顔・大きさに合わせてそれぞれありますね。

もちろん、時代に応じで新しい原型の数は増えていきます。昔、先輩や先生に聞いた話では、お雛様というのは15~17歳くらいの青年のお顔をイメージして作られたものだそうですが、今は子ども顔に変わってきているかなと思います。

私がお雛様のお顔を描く上で気を付けていることは「かわいい中にも気品を持たせる」ということです。「かわいさ」が注目されがちな現代ですが、気品を持たせることも常に念頭に置きながら作っています。

 

お人形とは、モノではなく思いです

大豆生田さん作品で、ここを見てほしいという部分はありますか?

筆仕事もそうですし、思いを込めて作っていますので、表情や細かいところまでじっくり見ていただきたいと思います。「こんなところまで」というくらい手をかけていますので。女性のお化粧もそうですが、ちょっとした濃淡で奥行きが出たり表情が変わってきます。そういった細かい部分にも目を向けていただけたらうれしいですね。

雛人形の顔を製作する風景

今後はどのようなお顔を作っていきたいですか?

時代に即した流行のお顔はあると思いますが、従来のお顔は世の中が移りゆく中でも一つの伝統として残っていくと思います。
表現が難しいですが、現代的でかわいらしいというより「昔ながらのイメージを生かしつつ今の時代に合うようなお顔」をイメージして作っていきたいと思います。

最近では雑貨屋さんなどで手頃な価格の雛人形も見かけるようになりましたが、私の作るお雛様はそういったものとは作り方が違うと思います。雛人形は、桃の節句にお子さんの成長を願って飾るお人形です。そんな思いを込めて職人が丁寧に仕上げています。「お人形とはモノではなく思いである」ということを感じ取ってもらえるような人形作りをしていきたいです。

人形師の大豆生田博さん

作家プロフィール
頭師:大豆生田 博(おおまみうだ ひろし)
さいたま市岩槻区生まれ。頭師に従事。
経済産業省指定伝統工芸品岩槻人形の伝統工芸士に認定される。東日本伝統工芸展に多数入展。伝統を守りつつ、現代に受け入れられるオリジナル新頭を製作している。

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